池の水全部“は”抜くな! (月刊つり人編集部 (著))

以前から私が疑問に思っていた外来種の駆除に対して深掘りされている本です。

外来種の駆除は確かに必要かもしれません。ヒアリなどの日本にいなかった種が突現日本に現れ何らかの被害にあう。ましてや被害者が子供ならおちおち外で遊ばせられないし、パニックになるのは当然でしょう。

しかし、私が依然見たTVの中でニホンザルと外来種の猿の交配が問題になっていました。交配してしまったらその子供はニホンザルとの区別がつきにくく、純粋なニホンザルを守るために外来種のサルやその子供は駆除してしまおうという話でした。

その時に非常に違和感を覚えたのです。まず、外来種であろうが何であろうが、生き物の命を奪うのにはそれなりの「言い訳」がいります。食べなければ死ぬとか、家畜を害するからなど仕方なく生き物の命を奪うのであって、誰だって犬や猫を悪戯半分で殺していたら違和感を持つでしょう。

はたして、外来種のサルの駆除が、人間の倫理観に照らして妥当といえるのでしょうか。ニホンザルからしたら、自分のパートナーや子供を殺されるわけですから「守ってくれてありがとう」ではないはずです。

ニホンザルに関してはこの本の中でも少し出てきますが、他にも、そもそも外来種とは何かが書かれています。外来種とは明治以降に入ってきた種を外来種と呼んでいるだけで、もちろん明治と江戸の間に何か生物学的なイベントがあったわけではないので、その境界には意味がありません。 なので、奈良時代ごろに入ってきたモンシロチョウは外来種ではないそうです。

他にも、人間の利益になる外来種もいます。ムール貝などは昭和初期に海外からくる船によって運ばれてきた外来種ですが、食用として利用されています。

そもそも、人間に害のある種は在来種であろうが変わりません。スズメバチは年間熊より人を殺していますが、絶滅させるべきでしょうか。

外来種は入ってきたときは生態系の隙間に入り込むので、爆発的に増えますがその後は落ち着くそうです。増えすぎると自分たちの餌がなくなって住みにくくなったり、餌として捕食されたりするからでしょうが、そうなったとき、本当に駆除する意味があるのでしょうか。安定した生態システムを人間が改ざんするにはアドホックに1種絶滅させるだけでは無駄で、全体への影響を考えてバランスを整えないといけません。そこまでの情報を集めて、分析して生態系をデザインすることが果たして可能なのかは非常に疑問です。

そもそもエコロジーに関しての議論はいつも「絶対的な自然」があるという前提ですが、現在人間のかかわっていない場所などありません。田んぼにカエルがいることには確かに風情を感じますが、田んぼは人間の作ったもので自然とは言えないでしょう。しかし、現在地球が温暖化しているならば、地球のどこにも手付かずの自然はないということになります。

偉大な自然や、美しい自然に思いをはせるのと、実際に人間ができる最低限のこととは区別すべきでしょう。

なので、この本の結論としても最低限の害獣、害虫駆除はするべきだが、あまり極端なことは無理だというものになっています。

やはり、極端なことあまりよくありませんね。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です