ちょっと経済学っぽい話

曲がったきゅうりはなぜ店にないのか

以前TVで食糧問題がテーマの番組をやっていた時、「店にまっすぐなきゅうりしかなのは他を捨てているからで、もったいない」という話をしていました。

確かに一部は加工食品に回しているようですが、同じサイズの野菜を作ることなど不可能なはずなのに店頭には同じサイズしか並んでいないのは不自然な気もします。

「捨てるのもったいない。曲がってても買う。」という人も多いでしょう。

では、我々は店頭にまっすぐなきゅうりと曲がったきゅうりが置いてあった場合どちらを買うのでしょうか。

おそらくほとんどの人がまっすぐなきゅうりを買うでしょう。

牛乳などでも奥のほうから賞味期限が一番長いものを取り出して買う人がいるのに、同じように並んでいるのに曲がっているものを買うのは何か損をしたような気がしませんか?

1円でも安いものを買いたい、損をしたくないといった心理ができるだけよいものを選ぼうとするのかもしれませんね。

なのでもったいないと言っている人の本音は「曲がっているものでも買うよ、ただし安ければね。」ということでしょう。

しかし、売る側の立場からすれば、1個当たりの値段はできるだけ高くして売りたいはず。『国富論』にも書いてありますが、人間が1日に食べられる量には限界があるので、大量生産してもたくさん買ってくれるわけもなく、売れ残ってしまいます。なので、できるだけ単価は上げておきたいのです。

ですが、ヨーロッパの農家の収入は9割が税金だそうです。農業大国のイメージがあるアメリカで6割、日本の場合は2割です。

これを、国に頼らず農家の自助努力とそれを支える消費者に支えられて日本の農家が成り立っているとみるべきなのか、国の基盤をかなり不安定なシステムに負担をかけながら成立しているとみるべきなのかはわかりませんが、今回は別の話。

価値は自分で決められるが価格は他人が決める

経済学はいくつかの単純な原則から始まっています。

  1. 同じものなら少ないものは安い
  2. 腐るほどあったら無料
  3. 情報の完全性

等々ですが、1はリンゴ2個より1個のほうが安いのでわかりやすいですね。2はよく空気でたとえられますが、無いと死ぬけどなくて困ることがないので無料ということですね。3はちょっとややこしいですが、どのお店が一番安いかはみんな知っている。ということです。

キュウリで言うと、1では曲がっていてもデカくてお得と考える人がいたとしても、変なきゅうりということで価格が安くなってしまうので廃棄されてしまう。

人間も一緒で、例えば恋人がかっこ悪い服装でデートに来る場合、自分がその人を本当に好きだとしても、周りの人にばかにされたり低く見られたりしてしまうので関係を考え直さざるを得ないなど。

2では実際はきゅうりは腐るほどあるので、例えば1個だけ残して100個捨てたりすれば、その1個に100個分のコストを乗っけられるので1個しか食べない人にも実質100個分売ることができるということですね。

なので、昔に比べて格段に生産性が上がっているのに昔と同じもののはずのきゅりの値段が高くなっているのは単に数字上のものではなく、「品質」が上がっていると解釈できます。

なので、もしAmazonが大量生産で1個1円のキュウリとかを作ってドローンで無料配達してきゅうり農家をすべてつぶすことも将来的には可能なのかもしれません。

3が一番非現実的に見えるので、経済学の不完全性の話でよく出てきます。普通に考えて日本全国で値段も違って当たり前、実質近所のスーパーしか行けないし、すべての広告に目を通すのも無理な気もします。

しかし、ネット通販のおかげで、最安値を瞬時に判断して購入することができるようになってきています。

さすがにきゅうりは無理じゃないかと思われるかもしれませんが、さっきの話のように、Amazonが現地の土地を買い、野菜工場で自動生産し、主婦がぽちっと押すとドローンがきゅうりをもいで数十分で持ってきてくれるとなると、新鮮なきゅうりが数円で手に入るのに、スーパーへ行く意味がありません。

農家の人はもとより、運んでくれる運転手の人から農協、卸売市場、レジのお姉さんや品出しのおじさんまで一気に失業かもしれませんね。

結論:経済学がわかれば未来を予測できる。

今現在、テクノロジーの発達が資本主義に拍車をかけています。資本主義とはつまり ”お金”主義。お金があれば何でもできると信じることです。もちろん、今現在、永遠の命を望んでもかなわぬ夢ですし、ビル・ゲイツが明日金星に行こうと思ってNASAに電話しても「明日はやめておこう」と言われるでしょう。

しかし、iPS細胞が本格的に実用化すれば、内臓を全て入れ替えて永遠に生きることは可能かもしれませんし、ビル・ゲイツが自分の資産だけでなく、資金調達して事業として金星行きを計画した場合、余生を金星の周回軌道で過ごすことは可能かもしれません。

テクノロジーの発達が、お金でできる領域をどんどん増やしているのです。

しかし、どんなにテクノロジーが発達しても、資本主義というシステムの上で運用されるので、「お金がないと何もできない」という状況にもなりかねませんし、「これからの未来はどうなるんだろう」という不安も付きまとうでしょう。

なので、経済学の一形態である資本主義を理解するにはやはり経済学を勉強しないといけないということですね。

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