ジャンル的にはSFになると思います。読んでおいた方がいい。
主人公はこの世全てを複製し、理解することを使命として産み落とされます。最初は石やコケだったのが、動物を理解し、人間になり、言葉を覚えて、守るために戦い、喪失を知ります。理不尽な死や満ち足りた老衰も経験しますが、その反応はやはり子供の用で、納得できずに引きこもろうとも強制的に物語を進められます。
SFには永遠の命を持った人が出てくる系の話というのがあって、漫画だと、『 火の鳥 』とか『EAT-MAN』、小説だと 『みずは無間』 とかが思い浮かびます。他にもいっぱいあるとは思いますが。
科学技術のギミックによる面白さは実はSFの本質ではなく、 SFの本質は社会を俯瞰することにあります。ユートピアやディストピア、宇宙へ出たりロボットや猿に支配されたりするのは社会の本質を暴こうとしているからです。そういった社会の中で主人公は俯瞰して状況を把握し、生きることの意味を見出していく。そこにSFの価値があると思います。
物語がたとえ荒唐無稽でも、その本質はあらゆる仮定から生きることの本質を考えようとするものです。
よって、死なない人というのは実に都合がよく、その社会が共有しているルールやその中で当然とされている生き方に疑問を抱かせるのが、不死者の役割なっています。しかし、えてしてそういう作品は主人公が答えを見出さない、あるいは教えてくれないまま終わるような気がします。
つまり、命とは、生きるとは何かに対して疑問を投げかけるだけで、あまり成長しないような気がするのです。
しかし、この作品は何らかの答えに向かって主人公が成長しています。
主人公の能力は複製とか変身です。対象物を理解して身に収めることでができます。なので、この作品を見たときに『EAT-MAN』にインスパイアされた作品かと思いました。
主人公のこの能力はこの世のすべてを理解するという使命のためにあります。つまりアカシックレコードですが、それは全知全能ですべて思いのままになる神が最後に欲するのは知識や能力ではなく「物語」であるという私の好きな考え方からきているように思います。つまり、物語に登場する「黒いの」は我々読者なのではないでしょうか。
主人公は人の死や思いを理解して取り込むことで成長する。つまりこの作品のテーマは全ての物語の収集という使命を主人公に持たせることによって、物語のゴールが主人公の成長になっているのです。
なので、主人公は成長するしかありません。どうしても神様のような立ち位置になってしまいがちな他の不死身系の話とは違います。戦いをやめて隠居生活をしようとしても強制的に事件を目の当たりにし、苦しめられ、成長させられます。
この物語は最後、主人公がもう一つ宇宙を作って終わる気がします。