他の哲学関係の解説書と違うのは、単純に時系列的に並べたり、淡々と解説していったりするものではなく、どの部分が現代にどう役に立つのかをかなり絞り込んで解説していることだと思います。
かといって単純に哲学者の答えだけを持ってきてこういうものだとか、有名どころを解説するようなものではなく、思考のプロセスを開設することで、どう考えればよいのかを教えてくれる、本当の意味で”役に立つ”哲学書であり、ビジネス書になっています。所謂、魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えてくれる本ですね。
それに、この本の優れているところは、単純にビジネスや、自分が生きる上でこう考えれば役に立つというビジネス書というだけにとどまらず、きちんと現代社会に対する批評にもなっているという点です。つまり、自分の生き方や考え方が、日々の業務だけでなく、仕事や組織、社会の在り方が、ミクロやマクロの視点ですべてつながっているという本になっています。
哲学というと実生活とかけ離れた話をするか、もしくは短期的にすぐに役に立つ話に落とし込んで終わらせようという本はありますが、ここまで広い深い領域をカバーできるものかと思い驚きました。
なので、多岐にわたる思想の説明にもかかわらず、内容は一回しているように思いました。
そして、自分の思考のバックグラウンドにやはり哲学的知識が関係しているというのを知りました。自分の中にもすっと入ってきた。
以下、メモ
- ロゴス、エトス、パトス(アリストテレス)→倫理的に情熱をもって論理を扱うものはかっこいい。
- 予定説→ギャンブルだから働く。
- ロック、経験論、タブララサ→白紙だから努力、教育に意味があり、0から頑張れるし、AIが可能。
- ルサンチマン(ニーチェ)→酸っぱい葡萄、価値観の転倒を望む、同じ価値観の奴隷。単なる仕返し。
- ペルソナ(ユング)→さいころポートフォリオ、現在さいころの数が増えて複雑になっている。逃げる必要がある。
- 自由からの逃走(エーリッヒ・フロム)→ヒトラーの出現、豊かさとルールにより縛られて逃げられない代わりにばかになる。
- 報酬、スキナーボックス(パラス・スキナー)→たまに餌の出るボタンほどネズミはよく推す。絶対でなくても、必ず出てもダメ。
- アンガージュマン(サルトル)→エンゲージメント、いやいやではなくやりたいことをやる(引き受ける)そうしないと自由からの逃走になる
- 悪の陳腐さ(ハンナ・アーレント)→「悪とはシステムを無批判に受け入れた凡人によってなされる」、システムの最適化と変更が必要。
- 認知的不協和(レオン・フェスティンガー) →合理的に行動するのではなく、行動を合理化するもの。認知的不協和を解消するために
- フロー(ミハイ・チクセントミハイ)→ゾーンに入る
- 予告された報酬(エドワード・デシ)→予告された報酬が内発的動機付けを低下させ、イノベーションを起こさせない。セキュアベースから何度でも挑戦すべし。
- 君主論(マキャベリ)→より良い統治のためなら不道徳な行いも許される。
- 悪魔の代弁者(J・S・ミル)→集団の意思決定能力は同質性とトレードオフ
- フェルディナン ド ・テンニース→ゲマインシャフト(地縁、血縁)からゲゼルンシャフトへ(機能、役割)と変化していく。ソーシャルメディアと二枚目の名刺が次の共同体。
- 支配の正当性(マックス・ウェーバ)→歴史的正当性、カリスマ、合法性。
- マタイ効果→4から6月まれのスポーツ選手が多い。
- ジョン・ナッシュ(ナッシュ均衡)→繰り返し囚人のジレンマでは基本はいいやつで、裏切り者とは徹底的に戦うやつが強い。
- ヘールト・ホフステード(権力格差)→副操縦士が操縦かんを握っているときの方が事故が少ない。
- 反脆弱性(ナシーム・ニコラス・タレブ)→フェイルセーフ
- マルクス→システムへの依存が疎外を産む。
- ホッブズ→巨大権力に支えられた秩序の方がまだまし。
- ルソー(一般意思)→事故った潜水艦の発見は多数決の方が正確だった。市場の計算力と同じ。一般意思が今後実現する。
- 差異的消費 (ジャン・ボードリヤール )
- 公正世界仮説 (メルビン・ラーナー)→努力は必ず報われる。失敗したら世の中が悪いという幻想を産む。